私が培った思想

7月5日、日曜日、夜9時から「官僚たちの夏」という城山三郎原作のテレビ番組がスタートした。この番組は通産官僚の佐橋滋(さばし しげる)さんを描いた物語である。佐橋滋さんは、私の通産省入省の動機にもなった尊敬する人物である。
佐橋さんがまだ課長だった頃の話が第1話で取り上げられていた。
当時アメリカの圧倒的な自動車全盛時代に、とても無理だと思われた「国民車構想」に邁進する佐橋さんと、それに応える民間の立派な経営者がドラマ化されていた。 そこで流れる思想は、まさに私が通産省時代に培った思想であった。日本を何としても豊かな国にしなければならない。アメリカに追いつけ、追い越せという熱い気持ちで、政策を実現に邁進する当時の官僚の思想である。
これからのドラマの展開は別として、私はそういう思想の下で育てられた。だからこそ今の、郵政民営化法のようなアメリカべったり、アメリカの言いなりに法律を作るような考え方には全くなじまない。アメリカの圧力に屈して、日本の金融業を彼らの支配下に置くことを、断固否定する自分の考え方は、通産省時代に培われたものだと改めて感じる中に、昔の官僚は、アメリカについつい追随しがちな日本の政治家を悟し、そして、国益を守り日本の発展の為に邁進していった先輩が沢山いたものである。自分で言うのも何だが、私も最後の通産官僚ではなかったかいう気がする。
こういう国益を重んじる思想が、戦後のまだ弱々しい日本にあったればこそ、今日の発展を築いたにもかかわらず、成長した日本はその思想を何故なくしてしまったのか。何故、郵政民営化法のような情けない法案が、改革の名の下に通されるのか。植民地のような日本にされることに全く抵抗もしなくなった今日の日本の政治家や官僚の姿は、亡くなられた佐橋先輩に対しても申し訳ない思いがしてならない。